北里大学病院
第19回 心の傷という視点
長らく睡眠薬が処方され、それでも夜になると落ちつかない、もの忘れのある高齢の人について相談を受ける機会がありました。お会いしてお話に耳を傾けていると、「悪い夢を見て眠れない」と述べました。「子どもの頃につらい体験をして、誰にも語らないまま我慢している人の中には、その体験の影響で睡眠が浅くなることや、悪夢が増えることがあるようです」「子どもの頃はちょうど戦時中だったと思いますが、当時はどんな生活だったでしょうか」と尋ねました。すると、戦時中に戦闘機の機銃掃射から命からがら逃げた体験について語りました。一通り語り終えると「こんな話をしたのは今日が初めてだ」「あの頃はみんな苦労して悲惨な思いをしていたから、たいしたことではないと思っていた」「でもとても恐かった」と涙ぐみながら語りました。しばらくして再会したときには「お話しして以来、悪夢を見ることはなくなりました」と笑顔で語りました。
これと似たようなことはスナックバーちづるでもちょいカラサロンでも感じていること。
生育過程で心が傷つく体験、逆境的な体験があったかどうかを尋ねることはとても大切です。尋ねることで語りやすい状況が生まれ、それが心や身体の変化を支援者と対象者が理解を共有しやすくする状況を生み出します。
スナックはバカ騒ぎをする場。
カラオケ喫茶は高齢者のたまり場。
そうした理解をされる方が多いように感じていますが、ご利用をいただくうちにそうではないことをお感じいただけると思います。また、そのように努めています。😊