あのままの指宿が好きでした。

指宿は私にとって特別な場所。

当時の指宿は南国らしい空気があって、
どこか昔の日本が残っているような街。

廃れた感じが居心地良いというより、
昔の賑わいや勢いの名残を感じられるのが好きだったのだと思います。

今思えば、
忙しい毎日から少し離れたかったのでしょうね。

のんびりと時間が流れる場所への憧れ。
鹿児島や指宿が私を呼んでくれたのかもしれません。

地元の方は、
「何もないところだよ」
そう仰います。

でも、何でもある場所で暮らしていた私には、
その「何もない」がどうにも心地良くて。

いつか指宿に住んでみたい。
そう思うほど、私にとって特別な場所でした。

泊まるのはいつも同じホテル。
きっと良い時代があったのだろうな。
たくさんの笑顔を迎えて来たんだろうな。
そんなことを感じさせる施設でした。

今の時代には流行らないのかもしれません。

それでも、
そこにいる自分が好きでしたし、
指宿で過ごす時間は年に一度のご褒美でした。

今の基準で見れば、決して豪華な食事ではなかったのかもしれません。
でも私にとっては、それで十分だったのです。

船内を思わせるダイニングは、
今でも忘れることのできない特別な空間でした。

席に案内されるまでのワクワク感。
ママと話をしながら食事をする時間。

私にとっては、それだけで十分すぎるほど贅沢でした。

あの時間の豊かさを、
今でも忘れることができません。

残念ながら、そのホテルは時代に合わせてリニューアルされることになり、
取り壊されてしまいました。

霧島へ移り住んでから、
そんな知らせを聞くとは思いませんでした。

思い出の詰まったホテルがなくなると知った時は、
とても寂しい気持ちになりました。

それでも、
お別れを言いに行くことはしませんでした。

時代に合わせて変わっていくことは必要なことですし、
地域が生き残るためには避けられないことでもありますものね。

ただ、

私の中では、
あの少し時代遅れだったホテルも、
あの頃の街並みも、

そのままでいてほしかったのです。

全国の街がきれいに整備されていくことは良いことなのでしょう。

でも私個人としては、
あのままの指宿が好きでした。

そんなことを、
今でも時々思い出すのです。

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