人とのつながりに、恋愛という理由がなくてもいい。|名前のつかない関係を大切にする

スナックという場所には、
少し不思議なところがあると思っています。

お酒を飲む場所でもありますし、
お話をしたり、歌う場所でもある訳ですが、

人によっては、そこにいる女性との出会いや、
少し特別な関係を期待する場所と思っている方もいらっしゃるようです。

何を求めてお店へ行くのかは、それぞれの考え方ですから、
それ自体、私たちは否定するつもりはありません。

ただ、ちづるは開店した頃から
男女であることを、店とお客様との関係の中心に置くようなことはありませんでした。

同業者からは、
「疑似恋愛の場所なんだから」と教えていただいたことがありますが、
そうした営業をすることは、これまでの11年間の中で一度も考えたことはありません。

期待してもらっても、責任が取れないから。

このお仕事を始める前から、
ママはよく、こう言っています。

「期待してもらっても、責任が取れないからね。」って、

なので、「もしかしたら」と思わせるようなことを、
ちづるでは絶対にしないと決めています。

自分だけが特別なのではないか。
もっと通えば、何かが変わるのではないか。
店の外なら、違う関係になれるのではないか。

期待を持たせておいて、そうした期待に応えるつもりがないのであれば、
はじめから期待させてはいけない。

それが、ちづるの考え方ですが、
冷たく接するということではありません。

少しでも楽しい時間をお過ごしいただけるよう努めていますが、
それを恋愛だと勘違いされるようなことはしない。

期待はさせない。
でも、大切にはする。

この二つは、両立できると私たちは思っています。

色気ではなく、もてなし。

私たちは着物を着てお仕事をしています。

着物姿に色気を感じる方もいるとは思います。

それは見る方の感じ方ですから、
こちらで決められることではありません。

私たちが着物を着ている理由は、色気をお感じいただくためのものではなく、
むしろ反対なんですね。

肌を大きく露出させたり、胸元を強調するような服装で、
男性の視線を集める接客はしたくないという考えから、着物を着ています。

こうした考えは、店内も同じで、
暗い照明にして、雰囲気を作ろうとはしていません。

ですので、スナックとしてはかなり明るいお店だと思います。

また、色恋を連想させるようなお話をされる方は、
普段のちづるにはいらっしゃいません。

初めて連れて来られた方が、
いわゆる「スナックらしさ」だと思われているのでしょう。

そうしたお話を始めることはありますが、
そんなとき、連れてきたお客様が、「ここでは、そういう話はダメなんだよ」と教えてくださることがあります。

長く通ってくださっている方は、
ちづるがどういうお店なのかをご存知のようです。

私たちは、旅館のように考えています。

ちづるは、業種としてはスナックですが、
私たちの心構えはどちらかというと、宿泊施設に近いのかもしれません。

旅館へ行くとき、「あの女将と特別な男女の関係になりたいから」
そうした理由で泊まりに行く人はそれほど多くないと思います。

それでも、もてなしが好き。気遣いが心地いい。

あそこへ行くと、ほっとする。だから、また行きたい。
そういうことはあると思います。

何度宿泊してみたところで、女将と恋愛関係になることなんてないでしょうし、
そこから進展することなんてありませんが、人と人との関係は少しずつ深くなっていきますよね。

ちづるも、そんな場所でありたいと思うのです。

「好き」にも、いろいろある。

「あの人が好き」という言葉がありますが、
好きという気持ちが、すべて恋愛である必要はないと思います。

話すことが好きだったり、笑い方が好きだったり。

気遣いが好きという場合もあるでしょうし、
場所が落ち着く、また顔を見たい。

これも人を好きになることの一つですものね。

恋人でもなければ、家族でもなくて、親友と呼ぶほどでもないけれど、
しばらく姿を見なければ「最近、どうしているのかな」と思う人がいる。

それも立派な人との縁だと私たちは思っています。

特別な異性にならなくてもいい。

歳を重ねると、人とのつながりが少しずつ減っていくことがあります。

仕事を離れることもそうですし、
子どもが遠くで暮らすようになったり、友人と会う回数も減ってしまったり。

大切な人との別れを経験することだってあります。

そんなとき、
誰かに自分を必要としてほしい。誰かに気に掛けてほしい。
自分が行くことで喜んでほしいなんて、

そんな気持ちになることは、不思議なことではないと思うんですね。

ただ、
その気持ちをすべて『誰かの特別な異性になりたい』という形にしなくてもいいと思うのです。

自分のことを少しだけでも知っている人がいる。
それだけでも人は誰かとつながっているということですものね。

「暮らす家は一人。でも、生きる世界は一人にしない。」ということをブログに書いたことがあります。
「待っている人がいなくてもいい。でも、自分を待っている生活は、あった方がいい。」ということも書きましたが、

男女間における「つながり」は、
必ずしも恋愛である必要はないと思うんですね。

名前を付けなくてもいい関係が人生にはあっても良いと思うのです。

人との縁は、買うものではなく、積み重なるもの。

お金を使えば、楽しい時間を過ごすことはできますよね。

美味しいお料理も食べられますし、
高級なお酒だって楽しむことができます。

より良いサービスを受けることだってできる訳ですが、

「あの人、最近どうしているかな」と誰かが自然に思ってくれる関係まで買うことなんてできないんですよね。

人との縁というのは、少しずつ積み重なっていくもので、
何も特別な約束をした訳でもないのに、大切な人になっているという関係もあります。

色恋をしなかったことで、離れていった方もいらっしゃるのかもしれませんが、
色恋をしなかったからこそ、長く続いてきたご縁もあるように思うのです。

開店から11年が過ぎた今、
ちづるをご利用くださっているお客様と良い関係を続けてこられたのも、
お互いに無理な期待を持たず、一人の人としてお付き合いしてきたからなのかもしれません。

長くお付き合いしているからといって、
特別な関係になった訳ではありません。

それでも、お互いのことを少しずつ知り、
顔を見れば安心したり、しばらく会わなければ気に掛けたり。

そんな関係が今も続いていることを、
私たちはありがたいことだと思っています。

男性でも女性でもよくて、既婚でも独身でも関係なくて、
年上でも年下でも。

男女であることを、人との関係の中心に置かなくてもよくて、
恋愛にならなくても、親しさは生まれるものだと思うのです。

期待させるようなことをしなくても、
人を大切にすることはできますものね。

誰かの「特別な異性」にならなくても、
誰かにとって大切な人にはなれる。

そう思うと、歳を重ねてからの人とのつながりには、
そんな形がもっとあってもいいと思っています。

恋愛の第一線からはとっくに離れてしまった私たちですが、

だからこそ今は、
恋愛ではない人とのつながりの中にも、
大切なものがたくさんあることに気づけるようになったのかもしれません。

女性としての魅力も接客の一部にしている店で、それを楽しんでいる男性たち

ちづるが選んできたのは、少し違う世界です。

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