年齢を重ねて分かったこと

長く店を続けていると、不思議なことがあります。

「ここがなくなると困る。」
「あと20年続けてよ。」

そんな言葉をいただくことがあります。
とてもありがたく、嬉しいことです。

でも正直なところ、なぜそう言っていただけるのか、
私たちにもよく分かりません。

ちづるは特別な店ではありません。

有名なお店でもありませんし、大勢のお客様で賑わうようなお店でもありません。
それどころか、静かな日の方が多い小さなお店です。

それでも長くお付き合いしてくださる方がいます。

そして気が付けば、お客様という言葉だけでは説明できない関係になっていることがあります。

私たちは商売をしていますから、
お客様に来ていただかなければお店は続きません。

ですので、お喜びいただくことはもちろん、
売上のことも考えていかなくてはいけません。

ですが、人を売上として見るようになってしまうと、
何か大切なものが失われてしまうような気がしています。

体調を崩していないかな。
最近顔を見ないな。
元気にされているかな。

そんなことが気になることがあります。

それは接客のテクニックではありません。
来店回数を増やすための方法でもありません。

ただ、気になるのです。

若い頃は、もう少し割り切って考えていたような気もします。
けれど年齢を重ねるにつれて、お客様にもそれぞれの人生があることを強く感じるようになりました。

嬉しかったこと。
悲しかったこと。
病気のこと。
家族のこと。
そして誰にも言わない寂しさ。

そうした時間の一部を、私たちはお客様と共有できるような年齢になったということなのでしょうか。

気になる人がいれば声を掛けますし、
困っていそうなら手を差し伸べます。

それは商売だからではなく、自然に感じることで、
年齢を重ねるにつれて、そうした気持ちのまま動けるようになってきました。

不思議なことに、私たちの気持ちに気持ちで返してくださる方が増えてきました。
それは、とても嬉しいことです。

私たちがお客様を支えているようで、本当は私たちの方が支えられているのかもしれません。

ちづるは大きな店ではありません。
むしろ小さな店です。

だからこそ、ご縁に支えられてここまで続けてくることができたのだと思うのです。

世の中には効率の良い方法もあるようです。

人との距離を縮めるテクニックもあるのでしょう。
それを勧めて下さる方もいらっしゃいます。

でも、人は案外そういうものを見抜くような気もします。

とはいえ、私たちは昔からあまり器用な方ではありません。
結局はこれまで通りなんですけれどね。😅

ただ、人を手段として扱わないこと。
売上や数字だけで見ないことだけは、創業当初から忘れたくないと思ってきました。

それが正しいのかは分かりません。
こうした考え方だからこそ、代わり映えのない時間を過ごしてきたのかもしれません。

でも振り返ってみると、ちづるはそんなご縁の積み重ねで続いてきたような気がするのです。
だから「ここがなくなると困る」と言われるたびに、ありがたい気持ちと少し不思議な気持ちになります。

私たちは特別なことはできません。
ただ、これからも目の前の人を大切にしながら、いつも通りここにありたいと思っています。

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