第2話|はじまりの場所と、向き合った日々

第2話|はじまりの場所と、向き合った日々

借りた店舗は、かつてキャバクラとして使われていた場所でした。

華やかな時間が流れていたであろうその空間も、
長いあいだ閉ざされていた店内には、
静けさとは違う、どこか重たい空気が漂っていました。

扉を開けたときの感覚は、今でも忘れられません。

室内に足を踏み入れた瞬間、
思わず息を止めたくなるような空気に包まれ、
思わず咳き込んでしまうほどでした。

視線を上げれば、あちらこちらに張り巡らされた蜘蛛の巣。
足元の絨毯は湿気を含み、
一歩踏み出すたびに、やわらかく沈むような違和感がありました。

壁紙や残された調度品には、
長い年月を感じさせるタバコの痕が色濃く残っており、
室内全体が黄ばみを帯びているように見えました。

日中であっても十分な光は入らず、
懐中電灯の明かりを頼りに、
ひとつひとつ確認しながら歩き回りました。

この場所で、本当にお店を始めることができるのだろうか——
そんな不安が、何度も胸をよぎりました。

それでも、ここでやると決めた以上、
前に進むしかありませんでした。

電気の契約が整うまでは、
懐中電灯の明かりを頼りに、
壁に残る汚れを少しずつ拭き取る日々。

長く閉ざされていた空間には、
湿気やにおいが残っており、
玄関を開け放ちながら、空気を入れ替えることも欠かせませんでした。

掃除を続ける毎日は、
決して楽なものではありませんでしたが、
少しずつ変わっていく空間に、
わずかな手応えを感じるようにもなっていきました。

やがて、床の張り替えやカウンターの設置など、
必要な準備を進めながら、
お店としてのかたちが整い始めます。

気がつけば、
もう後戻りはできないところまで来ていました。     
この続きは、また次回に。

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