
借りた店舗は、かつてキャバクラとして使われていた場所でした。
華やかな時間が流れていたであろうその空間も、
長いあいだ閉ざされていた店内には、
静けさとは違う、どこか重たい空気が漂っていました。
扉を開けたときの感覚は、今でも忘れられません。
室内に足を踏み入れた瞬間、
思わず息を止めたくなるような空気に包まれ、
思わず咳き込んでしまうほどでした。
視線を上げれば、あちらこちらに張り巡らされた蜘蛛の巣。
足元の絨毯は湿気を含み、
一歩踏み出すたびに、やわらかく沈むような違和感がありました。
壁紙や残された調度品には、
長い年月を感じさせるタバコの痕が色濃く残っており、
室内全体が黄ばみを帯びているように見えました。
日中であっても十分な光は入らず、
懐中電灯の明かりを頼りに、
ひとつひとつ確認しながら歩き回りました。
この場所で、本当にお店を始めることができるのだろうか——
そんな不安が、何度も胸をよぎりました。
それでも、ここでやると決めた以上、
前に進むしかありませんでした。
電気の契約が整うまでは、
懐中電灯の明かりを頼りに、
壁に残る汚れを少しずつ拭き取る日々。
長く閉ざされていた空間には、
湿気やにおいが残っており、
玄関を開け放ちながら、空気を入れ替えることも欠かせませんでした。
掃除を続ける毎日は、
決して楽なものではありませんでしたが、
少しずつ変わっていく空間に、
わずかな手応えを感じるようにもなっていきました。
やがて、床の張り替えやカウンターの設置など、
必要な準備を進めながら、
お店としてのかたちが整い始めます。
気がつけば、
もう後戻りはできないところまで来ていました。
この続きは、また次回に。

