
第3話|夜の世界へ、一歩
夜の仕事など、これまで経験したことのなかった私たち。
店舗の改装が進む中、
「店をやりなよ」と背中を押してくださったママのお店で、
一週間、接客を学ばせていただくことになりました。
お酒の出し方。
グラスが空になっていないかを、さりげなく気配で感じ取ること。
ビールの美しい注ぎ方や、
カラオケ機器の操作まで。
目に映るすべてが初めてで、
ひとつひとつを必死に覚えていきました。
その合間にも、
グラスや備品の手配など、
何もかもがゼロからの準備。
慣れないことの連続に、
戸惑いながらも前に進む日々でした。
同時に、開業に必要な手続きも進めていかなければなりません。
慌ただしい毎日の中で、
もうひとつ大きな課題がありました。
「どうやってお客様に来ていただくか」
霧島に来たばかりの私たちには、
頼れる知人も多くはありません。
そんな中、ママがご自身のお店の常連のお客様に、
「この子たちが店を始めるから、行ってあげて」
と声をかけてくださったのです。
その温かさに、
どれほど救われたか分かりません。
開店資金も、想像以上にかかっていました。
広告を出したところで、
見ていただける保証もありません。
「どうしようか」
毎日のように、
同じ問いを繰り返していました。
そんなある日、ママが「オープンの三日間、無料にしてみたら?」と。
その一言をきっかけに、
私たちは決断しました。
開店から三日間、
無料でお店を開放することに。
数少ない知人に、
「ぜひ来てほしい」とお願いして回る日々。
並行して、
着物の着付けも何度も練習しました。
先生に教えていただきながら、
ようやく自分で着られるようになる頃には、
時間は、あっという間に過ぎていました。
気がつけば、
慌ただしくも濃密な日々の中で、
私たちは少しずつ、
「お店を始める人」になっていったのかもしれません。
この小さな一歩が、ちづるのはじまりでした。
この続きは、また次回に。
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