店を出た後のこと

数年前のことです。


店内画像はイメージです。

ある日、
友人に連れられて来てくださったお客様がいました。

その後、
何度か一人でも来てくださるようになったのですが、
ある時、こんなふうに言われました。

「ここは少し高いね。良い店を見つけたよ。」

それから、
しばらく来店はありませんでした。

正直、
もう来られないかもしれないな、
と思っていました。

ところが、
かなり時間が経ってから、
またふらっと来てくださったのです。

それからは、
以前より料金が上がった後も、
変わらず通ってくださっています。

私たちはこの仕事をしてきて、
ずっと感じていたことがあります。

夜のお店は、
どうしても「お店側の事情」が強くなりやすい。
ということです。

もちろん、
商売ですから当然です。

お客様に来ていただくために、
どのお店も、
いろいろな工夫や努力をされています。

それ自体を悪いとは思いません。

ただ、
ちづるは昔から、

「お客様に、どんな時間を持ち帰っていただけるだろう」

ということを、
よく考えていました。

お客様は、
お金を払って、
その時間を楽しみに来てくださる。

店にいる間は楽しくても、
帰り道でふっと現実に戻る。

その感覚が、
私たちはずっと気になっていました。

これは、私たち自身も感じていたことです。

もちろん、
多くのお店が、
LINEや電話やメールで、
お客様との繋がりを大切にされていると思います。

ただ、
それが「お店のため」だけではなく、
その人自身を思ってのものかどうか。

そういうことは、
意外と伝わるものなのかもしれません。

だから私たちは、
ちづるを、

「店にいる時だけ心が満たされる場所」

にはしたくありませんでした。

もちろん、
最初から特別な関係が生まれるわけではありません。

一度だけ立ち寄ってくださる方もいますし、
短い時間だけの出会いもあります。

でも、
そういう小さなご縁の中から、
少しずつ関係が続いていくことがあります。

海外や県外から定期的に来てくださる方がいたり、
季節の特産品を送り合ったり、
何気ない日常をLINEでやり取りしたり。

そんな関係になることもあります。

でも、
それは最初から作ろうとして出来るものではなく、
小さな時間の積み重ねの中で、
自然と育っていくものなのだと思っています。

もちろん、利益は必要です。

ちづるの料金について、
「少し高いですね」
と言われることもあります。

それは、
たぶん事実なのだと思います。

ただ、
私たちも最初から、
「高いお店にしよう」
と思っていたわけではありません。

ちづるは、
大きなお店ではありませんし、
たくさんのお客様が一度に入るようなお店でもありません。

静かに飲みたい方や、
少人数でゆっくり過ごしたい方が多いので、
どうしても回転数で成り立つようなお店にはなりにくいのです。

もし今より利用してくださる方が増えれば、
料金の見直しもできるのかもしれません。

でも、
今の状況では、
なかなか簡単にはいきません。

だから私たちにできるのは、
「それでも来てくださる方」に対して、
今できる最善を尽くすことなのだと思っています。

店の中だけではなく、
店の外での小さな時間や関わりも含めて、
今の「ちづる」という場所が出来ているのだと思います。

以前、
あるホテルに宿泊した時のことです。

朝食で、
かなり無理なお願いをしたことがありました。

今思えば、
困らせるお願いだったと思います。

でも翌朝、
きちんと用意されていました。

私はその時、
「豪華だな」
というより、

「ちゃんとこちらを見てくれているんだな」

と感じました。

効率だけを考えれば、
断る方が楽だったはずです。

でも、
目の前の一人のために、
考えて、
動いてくれた。

そのことが、
今でもずっと心に残っています。

たぶん、
私たちが目指しているものも、
そういうことなのだと思います。

豪華さを競うことではなく、
その人を、
ちゃんと一人の人として見ること。

派手なサービスではないかもしれません。

でも、

少しでも安心して過ごしていただくこと。

無理をさせないこと。

落ち着いて話せる空気を作ること。

そういう小さな積み重ねを、
私たちは大切にしています。

ちづるは、
お客様の人生の途中に、
少しだけ寄り添える伴走者のような存在でありたいと思っています。

だから、
タイムラインを書いたり、
noteを書いたり、
ママの一言を書いたりしているのかもしれません。

「来てください」

ではなく、

「今日もここにありますよ」

そんな小さな灯りのようなものを、
これからも静かに残していけたらと思っています。

店を出た後のことを描いたスナックちづるの漫画

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