かわいいものはトクをする。

お面というか、鎧というのでしょうか。
ずっと良い子ちゃんで生きていた私もお面、鎧共に捨てることができた私。

学生の頃から、吐いてしまうほどの頭痛に悩まされる毎日で、
お化けのような大きさの鎮痛剤をいつもバッグに入れておかないと不安で仕方なかったんですけれどね。

毎日のように服用していた鎮痛剤を飲まなくなったことに、ふと気が付きました。
いつものことなのに、ふと気が付くなんて、おかしなことなんですけれどね。

今思うと、
それだけ毎日が刺激的で、楽しくて、
鎮痛剤のことなんて、頭の隅っこに行ってしまっていたのだと思います。

吐いてしまうほどひどい頭痛が消えてしまったことは、とても不思議なことで、
体質が変わったんだ。なんて思っていたのですが、
頭痛が酷かった頃はどんな生活をしていたんだろう…

振り返って考えると、
ママとの出会いだったと思うのです。

彼女は、隠すことなく何でもお話してくれて、
良い子ちゃんだった私とは正反対…

そんな彼女を羨ましくもあり、
なりたくないと思ってみたり。

そんな葛藤が何年も続いて、
ママには随分迷惑をかけてしまったのですが、
葛藤しながらなのに、頭痛はピタッと治まっていて、
なんていうのでしょう…

あんな風になってはいけない!
あんな風になっちゃダメ!

そう思いながらも、どこか憧れるものを感じていましたし、
門前の小僧ではありませんが、ほんの少しずつママに近づいて、
私の中に、解放感のようなものが生まれていたのだと思います。

良い子ちゃんというお面。

私が望んでつけたはずなのに、
そのお面が、知らないうちに私の大きなストレスになっていたのかな。
今になって、そんなことを思うのです。

私自身、加齢とともに図々しくなってきたこともあるのかも… って、
そんなことも考えてみましたが、頑丈なお面でしたので、
年齢を重ねたくらいでお面が取れることはなくて、

色々と可能性を考えてみたのですが、
ママの底抜けの明るさと、温かさに照らされて、お面をしていることが息苦しくなってきたのだと。
そう思うのです。

鎮痛剤を手放すことができたこともそうですし、
長年、悩んでいた体の不調が消えたと言いますか、
考えることがなくなったのも、ママと出会った後のことで、
そんな時期が、ママと出会って少しずつ自分を出せるようになった時期と重なっているんですね。

医学的な根拠がある訳ではないので、本当のところは分からないのですが、
ママと出会った時期と、辛さが消えた時期を考えると、
そうしたことも要因の一つだったのかな。
なんて、思うのです。

ママに人を変える力がある。ということではありません。
もともとその人の中にあったものが、少しずつ出てくるというのか、
門前の小僧とお話をしましたが、それと似たようなことだと思うんですね。

というのは、彼女と長い時間いて、
私のように、お面をつけている人を多く見てきたことで、そう思うのです。

ただ、誰もがみんなそうなる。ということではなくて、
その人の中に、ほんの少しでも素直なところが見える。

ママの言う「かわいい人」というのは、
そんな人のことを言っているのかな。と思ったりするのです。

お店をしていると、いろいろなお客様がお越しになります。

ママのように裏表のない素直な人。
なかなか気持ちを表に出さない人。
一見とっつきにくそうでも、話してみるととても素直な人。

色々なタイプの方がいらっしゃる訳ですが、

私が思うのは、ひねくれているように見える人でも、
どこかに「素直さ」が見える人は、
少しずつお面を外してくれるようになる。

ずっと外している訳ではないと思いますし、
ママの前だけなのかも知れないのですが、

それでも、そんな顔を見せてくれるようになる人がいて、
かわいさが広がるというか、伝染していくというのか…

連鎖ですよね。😊

他のお客さんと距離をとりがちな方。

ママが「お昼、どうしますか?」とお聞きすると、
「歌えなくなるから、歌うときは食べないんだよ。」と、頑なに仰っていたんですけれどね。

そんな時間が長かったと思います。

ある日、他のお客様にカレーライスをお出しすると、
「ちょっとだけもらえる?」って。

今思うと、
歌う前に食事をしないのではなく、
とても慎重なタイプだったんだと思うんですね。

カレーの味が、お口に合ったようで、
以降、お惣菜を買ってくれるようになって、
「ママの作るものは、みんな美味しいね」なんて言って下さるように…

先日のランチは麻婆飯。
「ちょっとでいいからね。」と仰っていたのですが、これも美味しかったようで、
厨房へ来て、「麻婆が美味しかったから、もう少しご飯くれる?」と、嬉しい一言♪

ママはこういう素直な人が大好きで、
お店が終わってから、とても嬉しそうに私にそのお話を聞かせてくれ、
「来週は〇〇さんが来るから。」って、早速、メニューを考えているんですね。

たったそれだけのお話なのですが、
ママのよく言う、「かわいいものはトクをする。」というのは、
ママが得をさせる。そんなお話ではなくて、ママの気持ちを動かすことで、
動かしてくれることが嬉しいんでしょうね。

私は会計を預かる立場ですので、
ママの暴走を止めなくてはいけない立場なのですが、
そんな私でさえ、ママのような気持ちになってきて、
「来週も麻婆にしちゃいますか?」だなんて、私まで伝染しちゃってるんですよね。😅

金銭的なトクは全くと言っていいほどありませんが、
素直な人の気持ちをいただく。って、
私たちにとっては、大きな大きなトクと同じで、とっても大切なこと。

人の気持ちって、金銭で手に入れることなんて、できませんものね。
彼の変化にママと二人で大喜びをした。そんなお話でした。

おしまい。

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