スナック千鶴物語 第15話
霧島市国分「スナック千鶴(現在のちづる)」の実話をもとにした物語です。
第15話|店の形を探していた頃|スナック千鶴物語
千鶴がオープンして少し経った頃、
お客さんから「アルバイトをさせてもらえませんか」というお話がありました。
夜の雰囲気をあまり感じさせない、おとなしい印象の子で、
私たちと同じように着物を着て接客をしてもらっていました。
ただ、家庭の事情もあり、
しばらくして辞めることになってしまいます。
あの頃の千鶴は、
まさに猫の手も借りたいような状態でした。
お手伝いをしてくれる存在は本当にありがたかったのですが、
一方で、お客さんの数は少しずつ減り始めていました。
「このままではいけない」
そんな不安も、少しずつ大きくなっていた頃でした。
当時は、
他所のお店には若い女の子がたくさんいて、
お客さんからも、
「若い子を入れた方がいいんじゃないか」
とアドバイスをいただくことがありました。
そこで私たちも、
はじめて求人誌に掲載してみることを決めました。
当時は、
若い女の子がいることで“スナックらしさ”が出るのではないか。
私たちが接客するよりも、
喜んでいただけるのではないか。
そんなふうに考えていたのだと思います。
ただ、
夜の世界に慣れた雰囲気の方だと、
当時の千鶴には少し合わない気もしていました。
ですから、
「できれば、夜っぽさを感じさせない人がいいね」
とママと話しながら面接をしていました。
けれど、
やはり夜のお店です。
応募してくださる方の多くは経験者で、
いかにも慣れている雰囲気の方がほとんどでした。
そんな中で、
ひとりだけ、おとなしく控えめな印象の子がいました。
「この子なら大丈夫かもしれない」
そう思い、来てもらうことになりました。
最初のうちは、
とてもおとなしい子でした。
ただ、
働き始めてしばらくすると、
「なんだか少し違うかもしれない」
と思うことが増えていきました。
椅子に座ったまま動かなかったり、
お手伝いをお願いすると不機嫌になったり。
最初は、
「若いから気を遣っているのかな」
とも思っていました。
お店もまだ忙しいわけではありません。
「ママと私で動けばいいから、彼女には接客を頑張ってもらおう」
そう考えながら営業していました。
そんなある日、
彼女がママに、
「お客さんを連れて来てもいいですか?」
と話していました。
以前少しだけ夜の仕事をしていたことがあるそうで、
その時のお客さんを連れてきたいとのことでした。
お客さんが来てくださること自体はありがたいことです。
私たちも、
「いいよ」
と返事をしました。
ただ、
実際に来られた男性たちと彼女との関係性には、
少し戸惑うものがありました。
男性たちは彼女の言うことに従い、
派手にお金を使っていました。
少し意見が食い違っただけでも、
突然怒り出し、
「帰って!」
と強い口調になることもありました。
慌てて私たちが間に入り謝るのですが、
その男性たちは、
千鶴に来ているというより、
「彼女に会いに来ている」
そんな雰囲気でした。
最初は一人だけだった彼女のお客さんも、
少しずつ増えていきました。
気が付くと、
カウンターが彼女目当てのお客さんでいっぱいになる日もありました。
ただ、
私たちはその空気に、少しずつ違和感を感じ始めていました。
そんなある日、
知人から、
「少し気を付けた方がいいかもしれないよ」
と声をかけられました。
店の外でも、男性関係がかなり派手だという話を耳にしたのです。
もちろん、
その話がどこまで本当なのかは分かりません。
ただ、
千鶴までそういう目で見られてしまうことは避けたい。
そう思うようになっていました。
けれど、
本人に直接そんな話をすることもできません。
どうしたらいいのか悩んでいた頃、
仕事中に大きなミスがあり、注意をしたところ、
いつも以上に強く感情的になってしまいました。
その出来事がきっかけとなり、
彼女はお店を辞めることになりました。
そして、
彼女が辞めると同時に、
彼女目当てだったお客さんたちも来なくなりました。
ただ、
ママと二人で、
「これで良かったんだと思う」
と胸をなでおろしたことを、今でも覚えています。
あの頃の経験があったからこそ、
私たちは少しずつ、
「どんなお客様に来ていただきたいのか」
だけではなく、
「どんな空気のお店でありたいのか」
を考えるようになっていったのだと思います。
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