第17話|「ちづる」が生まれた頃|スナック千鶴物語

スナック千鶴物語 第17話
霧島市国分「スナック千鶴(現在のちづる)」の実話をもとにした物語です。



第17話|「ちづる」が生まれた頃|スナック千鶴物語

神様が遣わせてくださったような彼女。
私たちは今でも、そんなふうに思っています。

彼女の誠実さが、
私たちを急速に結び付けてくれたのだと思います。

お手伝いに来ていただいているというより、
本当のお姉さんのような存在でした。

営業が終わった後や、
準備をしている時間。

いろいろな話をする機会も、少しずつ増えていきました。

どうしてここまで千鶴に力を貸してくれるのだろう。

私たちはずっと不思議に思っていました。

ある時、
思い切ってそのことを聞いてみると、
彼女は少し寂しそうに話してくれました。

以前勤めていたお店では、
長い間、便利に使われ続けてきたこと。

生活のために、
それに従うしかなかったこと。

けれど、

「千鶴は、私のことを大切にしてくれる」

「だから、私にできることは何でもしてあげたい」

そう言ってくれました。

以前のお店からは、
何度も戻ってきてほしいと連絡があったそうです。

それでも彼女の気持ちが揺らぐことはなく、
千鶴を“スナック”として形にしていくため、
私たちに力を貸し続けてくれました。

価格のこと。

店内の見せ方。

お酒の仕入れや販売価格。

私たちが何も分からなかった部分を、
本当に細かく教えてくれました。

当時の千鶴は、

「飲んで、歌って2500円」

という料金設定でした。

けれど、
彼女やお客様から、

「ここなら5000円でも安い」

「もっと値上げした方がいい」

そんな声をいただくことが増えていました。

そこで私たちは、
思い切って3000円へ値上げすることを決めました。

けれど現実は、
私たちが思っていたよりも厳しいものでした。

値上げをした途端、
まるで潮が引いていくように、
お客様が遠のいてしまったのです。

経営的には苦しい時期でした。

それでも私たちは、

「お店の空気を変えるには、今を乗り越えるしかない」

そう考えていました。

どんなお店なら、
お客様に心地よいと感じていただけるのか。

どんな空気なら、
安心して過ごしていただけるのか。

3人で何度も話し合い、
実際の営業でも、少しずつ形にしていきました。

すると時間はかかりましたが、
少しずつ変化が現れ始めました。

若い女の子を目当てに来られるお客様。

色恋を求めて来店されるお客様。

そういった方たちの姿が、
少しずつ減っていったのです。

代わりに増えていったのは、

「落ち着いて飲みたい」

「静かに過ごしたい」

そんなお客様たちでした。

そして、
千鶴を“ひらがな”の

「ちづる」

へ変えたのも、
ちょうどこの頃だったと思います。

私たちが目指したかった店の形を、
これからも忘れないように。

プラスチック製だった看板を外し、
欅に漆文字で書かれた
「ちづる」
の看板
へ掛け替えました。

年末を迎える少し前のことでした。

あの頃の店内には、
それまでとは違う、

穏やかで前向きな空気

が流れていました。

「来年からは、きっと良い風が吹く」

そんな予感を感じながら過ごしていた、
幸せな時期だったことを今でも覚えています。

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