スナック千鶴物語 第19話
霧島市国分「スナック千鶴(現在のちづる)」の実話をもとにした物語です。
第19話|手漕ぎボートのちづる|スナック千鶴物語
手漕ぎボートのようなちづるは、
継ぎはぎを繰り返しながら進むというより、
どこか漂っているような状態でした。
それでも、
継ぎはぎを重ねるたびに、
少しずつボートが丈夫になっていくような手応えは感じていました。
年末だったと思います。
「来年は、もう少し大きなボートに乗り移れるかもしれないね」
そんな明るい話をしていたことを、今でも覚えています。
12月とはいえ、
街のにぎわいとはほとんど無縁だったちづる。
けれど、
お客様がお帰りになる時の表情は、
創業当時とは明らかに違っていました。
それだけで、
私たちには十分嬉しかったのです。
年末最後の営業日。
姉のような存在だった彼女のテンションが、
いつも以上に高かったことを覚えています。
お客様から、
飲めないはずのビールをたくさんいただきながら、
彼女は一生懸命場を盛り上げてくれていました。
きっと、
「良い一年の締めくくりにしてあげたい」
そんな気持ちだったのだと思います。
営業が終わる頃には、
彼女はもうフラフラでした。
それでも、
「良かったですね」
「良かったですね」
と、
何度も私たちに声を掛けてくれました。
そんな彼女の姿を見たのは、
あの時が初めてだったかもしれません。
それほど真剣に、
ちづるのことを考えてくれていたのだと思います。
「捨てる神あれば拾う神ありって、こういうことなのかもしれないね」
そんな話をしながら、
私たちは夜道を帰ったのでした。
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