第20話|少しずつ噛み合わなくなっていった頃|スナック千鶴物語

スナック千鶴物語 第20話
霧島市国分「スナック千鶴(現在のちづる)」の実話をもとにした物語です。



第20話|少しずつ噛み合わなくなっていった頃|スナック千鶴物語

かなり酔っていた彼女は、
その日もいつも通り代行で帰っていきました。

けれど帰る時の彼女は、
いつものように静かに

「お疲れさまでした」

と言う感じではなく、
どこかはしゃいでいるようにも見えました。

一年間頑張ってきたこと。

そして、
良い形で年末を迎えられたこと。

それを本当に喜んでくれていることが、
私たちにも伝わってくるほどでした。

私たちは店の片付けを終え、
そのままお正月休みに入りました。

のんびり過ごしていた頃だったと思います。

突然、
彼女からママへ電話が掛かってきました。

「警察に追われている」

「逮捕されるかもしれない」

とても真剣な声だったそうです。

何が起きたのか分からず、
私たちは驚きました。

とにかく一度会って話を聞こうということになり、
彼女に来てもらいました。

話を聞くと、
代行で帰宅したあの日。

家の近くで降ろしてもらった後、
自分で車を駐車場へ入れようとして、
隣の車へ擦ってしまったというのです。

もちろん、
お酒を飲んだ状態で運転してはいけないことは、
彼女自身も分かっていました。

けれど、
一人暮らしだったこともあり、
代行の方へ自宅を知られたくなかったそうで、
いつも少し離れた場所で降ろしてもらっていたとのことでした。

ただ、
接触してしまったことは事実です。

私たちは、

「警察へ正直に話しているなら大丈夫だよ」

と声を掛けました。

実際、
彼女はすでに事情を説明していたそうで、
少し安心した様子を見せていました。

けれど、
翌日になっても、
その次の日になっても、
彼女から電話が掛かってきました。

「家の周りに刑事が立っている」

「覆面パトカーが停まってこちらを見ている」

そんな話をするようになったのです。

あまりにも怯えているので、
私たちは彼女の自宅近くまで行ってみました。

けれど、
それらしい車や人は見当たりません。

時間を変えて何度か見に行っても、
状況は同じでした。

そのことを彼女へ伝えても、
彼女は安心する様子がありません。

それどころか、

「近所の人が事故のことを話している」

「壁を叩かれている気がする」

そんなことまで話すようになっていきました。

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