第8話|「下の下の下だ」と言われた夜
問題のあるお客さんは少しずつ減っていきました。
けれど、それでも気にせず来る人もいて、
私たちはどこか張り詰めた空気を感じながら毎日を過ごしていました。
それでも、残ってくれたお客さんたちは居心地が良かったのだと思います。
みなさん連日のように来てくださり、
それぞれ思い思いに寛いでいました。
ある日のことでした。
何か気分の良くない出来事があったのでしょう。
いつもなら周囲を気にすることなく、大きな声で楽しそうに話す男性が、
その日は険しい顔のまま、言葉少なめにお酒を飲んでいました。
私たちは、いつものように接客をしていました。
特別なことがあったわけでもなく、
失礼のないよう、いつも通りに。
けれど突然、
「この店は最低の店だ!
下の下の下だ!」
そう言い放ち、怒ったまま帰って行ってしまったのです。
接客に問題があったとは思えませんでした。
言葉選びも、態度も、
いつも通りだっただけに、私たちも驚きました。
その男性には持病があり、
食事制限もありました。
だから私たちは、周囲のお客さんに気づかれないよう、
その人専用のお肴をお出しすることもありました。
だからこそ、
「下の下の下だ」
という言葉は、
とても悲しく心に残りました。
ただ一方で、
彼のことを快く思っていないお客さんも少なくありませんでした。
そういう意味では、
来店されなくなることは、お店にとって悪いことばかりではなかったのかもしれません。
客層を少しずつでも良くしていきたい。
そう思い続けていた私たちでしたが、
理想のお店の空気までは、まだまだ遠い道のりでした。
この続きは、また次回に。
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